貴船・K邸

 

自然災害による唐突な営みの破壊を、

私達は阪神大震災で改めて痛感し、以降強く意識するようになった。

そして、嫌というほどその力の強大さを見せつけられてきた。

 

関西に大きな被害をもたらした一昨年の平成30年の台風21号。

関空橋にタンカーが激突し、橋が破損、片側の車線が通行できなくなったのが記憶に新しいあの台風です。

我が家では大きな被害はなかったものの、停電が丸二日ぐらい続き不便な思いをしました。

また、実家の木造住宅は、この台風の2カ月ぐらい前に起こった大阪北部地震とのダブルパンチで、

屋根や壁にそこそこの被害を受け、職人不足もあって修理が完了するまでに相当に時間を要しました。

 

そしてこのお宅も、この台風の影響と人災が重なり、意に反して建て替えることになった住宅です。

 

当初、そんなお話を聞いたのがこの台風の少しあと。

その後、それに対する補償やらその他のいろんなことの処理に時間がかかって、

さぁ!…と声がかかったのが昨年の9月の下旬。

そこから土地や景観、風致などの面倒な手続きを経て、確認が下りたのが今年の3月終わり。

災害による建て替えによる一切の緩和や酌量なく、

いつものように、腹を立て立て、でもぐっとこらえ、

抑えきれないときには時々反論を繰り返しながらの手続き。
その後の担当者との雑談で、こ
れでも相当早い方…と言われて愕然としたのを思い出しました。

 

そういえば、昔はあちこちから聞こえてきた役所での口論も、

最近はすっかりなくなったな…と思っていたのですが、

ここの窓口では、そんななつかしい光景が時々見受けられたのが、

後になってみると何となく理解できるような…。

 

風致・景観の厳しい地域だったのですが、求められたのが数寄屋風の外観。

その基準の曖昧さとシビアさのアンバランスに少々の文句は言わせてもらいましたが、

私の考え方をそう大きく方向転換する必要がなかったのは幸いでした。

 

それと、今回の建て替えの原因となったのが裏山。

土砂災害特別警戒区域となっていて、この対策が必要とわかりましたが、

法的な対応の詳細を聞くために確認検査機関にアクセスすると、

めったにない敷地の条件にはっきりとした回答をくれるところ少なく、探し廻ることになりました。

 

ここでは建て替えの建物の規模が元の建物に比べるとかなり小さくなったことが幸いし、

比較的簡単な補強で済む方法で進められることが出来ました。

ただ、簡単とはいえ余分な工事。

時間もお金もかかることなので、施主にとってはいろんな意味で負担になったことには変わり有りません。

 

確認申請はすでに事前協議を終えOKをもらっていたので、

役所での手続きが終わったあと、その手続きで得た書類や裏判を整えて提出。

即日に決裁がおりて確認が下り、ようやく着工に至りましたが、

被害から数えると、一年半が経過したあとでした。

 

建物はクライアントが考えたプランに少々手を入れた、

小さいながらも広がりを感じることが出来る、伝統的な日本の住宅を踏襲したシンプルなプラン。
風致・景観による指導の数寄屋風と、元々のシンプルな考えに若干の捻りを加えた外観。
全体的にいたってシンプルに構成しながら、

雑多な線を取り除き、必要な繊細な線を残した、繊細さと落ち着きが感じられる住宅となりました。

 

掘りごたつに座り込むと、

その落ち着きと窓から見える木々の揺らぎに癒され、

ついほっこりして、時間が経つのを忘れてしまいます。

そんな感覚が、日本人が時代を重ねて培い人間の営みとともに育て上げた、

日本の住宅の根本的な性能であり、

時代を超越して感じられる安らぎの一つであることを思い出させてくれます。

 

 

施工:京町家工房