「千里のお茶の間」というマンションの小さなリフォーム工事がひとつのきっかけをくれました。
このリフォーム工事は、「和室が欲しい」という要望以外に、
特にああしてくれ、こうしてくれという要望があった訳ではありません。
マンション暮らしという実生活のなかで感じておられる不都合を
すこしでも改善するためのシンプルな方法として、
素材という観点から落とし込んでいった結果です。
小さなリフォーム工事だったから実現できたのかも知れませんが、
木・土・紙・竹…などのこだわったそれぞれの素材がその潜在能力により、
想像以上に快適な空間にしてくれました。
古来から日本の建築を支えてきた素材で出来上がった空間は、
使う側がその繊細さを理解し感じてあげる必要があります。
その効果の程も計算し尽くされた新建材に比べれば、小さいかもしれません。
しかし、それらの素材が持つ数字には現れない潜在能力は、
技術の確かさやディテールの表現も手伝って、
想像の枠を超えた絶妙な「やさしさ」を生み出します。
言葉では表せない独特の「凛とした」空気感を漂わせます。
それが日本文化の奥深さと奥ゆかしさだと思っています。
素材・技術・ディテールなどの表現を大切にしています。