茶室「一休庵」

 

八畳の広間、三畳台目の小間、立礼席のお茶室を設えた住宅です。

 

広間と小間を使ったお稽古が出来るように、

 

また時代なのか、立礼でのお稽古もできるようにと立礼席も設けました。

 

ただし、立礼席は住宅の応接間兼用です。

 

 

 

 

私自身、地方のお茶室の現場は初めてだったのですが、

 

材料の調達がなかなか思うように行きませんでした。

 

 

地方の方が自然の材料は豊富な気がしますが、

 

お茶室に使うような材料は、

 

地方ではほぼ需要が少ないため、

 

供給が既になくなってしまっています。

 

 

小間に関しては、

 

結局京都から取り寄せた材料が多数。

 

 

是非とも現地の大工さんでということで、

 

頑張って仕事をしてもらいましたが、

 

材料が割高になってしまったことを考えると、

 

京都・大阪から数寄屋の大工さんに行ってもらっても、

 

変わらなかったような印象です。

 

 

数寄屋の大工さんと普通の大工さんでは、

 

納まりや考え方が違うので、

 

その違いを理解してもらうのが大変だったことを考えると、

 

私としては、京都・大阪の大工さんの方がやり易かったのかもしれません。

 

ですが、現地の大工さんというのも、

 

長い今後のことを考えると正解だと思うので、難しいところです。

 

 

現地で調達出来る材料のみを使って、茶室考えればいいのかもしれませんが、

 

そもそも都会に比べてマーケットが小さい地方では、

 

既製品、それも当たり前に数がさばけるであろう新建材を多用する傾向にあり、

 

京都や大阪では、まだまだ普通に手に入りそうな自然素材すら手に入らないことも多いので、

 

地方で和風建築を建てることの難しさを身にしみて感じました。

 

この辺は今後の課題ということでしょう。

 

 

門を入ってまっすぐに玄関に突き当たるのはちょっと気が引けるので、

 

視線を遮る細工を。

 

 

 

木がまだ育ってないし、

 

葉が落ちてる時期なので、

 

あまり効果的には見えませんが、

 

もう少し木が育てば、効果的な小庭になるはず。

 

 

灯籠は標灯籠といって、道しるべなどに使われるもので、

 

ご実家の庭にあったものを移設しました。

 

子供のころからあった思い入れのある灯籠だそうです。

 

お稽古場と住宅の分かれ道にもなるところで、

 

機能的にも合ってるし、

 

大きさも丁度いい感じに納まりました。

 

 

お稽古場と住宅は、その使用時間が被ることも考えられるので、玄関を別に設けています。

 

立礼席(応接室)はその中間に位置していて、どちらからも靴のまま入れるよう計画しています。

 

 

来客の多いお宅では、靴のままの応接って意外と便利なんですよね。

 

 

立礼席に置かれたエスニックな家具は、

 

アジア旅行で購入した思い出の家具とのことで、ご希望もあって立礼席に置くことにしました。

 

 

私自身、和だから、洋だから、とかあまり余計なことは考えない主義。

 

お茶道具だって、

 

お茶人さんが世界中の旅行先で買った、

 

およそ普通の感覚ではお茶や和室に合わないだろうと思うようなものでも、

 

普通に、

 

全く違和感なく使っておられることを考えると、

 

ちゃんとしたものは様式なんてこだわらなくても大丈夫 、

 

……と思ってはいるものの、

 

やはり実際に設置するまでは少々緊張感もあって、

 

置いてみてようやく落ち着いたというのも偽らざる気持ちです。

 

置き場所のニッチもギリギリの大きさに設定しましたしね。

 

 

写真で見ると違和感を感じる方がいるかもしれませんが、

 

実際は、全く気にならないんですよ。ホントに…。

  

 

遠目ではわかりにくいですが、玄関の襖はうろこ鶴の唐紙。

 

高価なものですが、使うところを限定して使うと、そんなに広い面積にはならないので、

 

思い切って使わせてもらいました。

 

とはいえ、余らすともったいないので、

 

端切れを、

 

立礼席の、納まり上どうしても発生してしまう小壁にも貼りました。

 

とことん使いましょうね。

 

 

 

…で、結果、この小さな壁が意外に評判がいいんです。

 

 

広間は八畳。

 

まず地元産の木材が、良くて源平、基本白太だということで、

 

赤身の杉というのが手に入りにくいとのこと。

  

地域性もあるので、これを仕方がないとすると、

 

どうしても木部が若干白っぽいイメージになってしまいますが、

 

これは時間が解決してくれるでしょう。

 

 

 

床には琵琶台を設えています。

 

これは表千家の松風楼と同じ間取りですが、

 

八畳のお茶室は、炉の床の間の位置の関係で、

 

畳の敷き方が普通の和室ではやらない敷き方をするケースが多くなります。

 

 

そもそもの考え方の違いなので、

 

それぞれの考え方を尊重すればいいと思うのですが、

 

建築を知っている方のなかには、

 

何となく気持ち悪いと言われる方もいるので、

 

その敷き方を曖昧にするためにもよく使う手法です。

 

 

琵琶台の束を伸ばさないのは、

 

私自身がなんとなく束を伸ばす納まりに違和感を感じているから。

 

 

最近になって、

 

ようやく束を伸ばす通常の納まりも慣れてきた感があるので、

 

今後は束を伸ばす納まりを検討するかもしれません。

 

 

琵琶台の天板は、

 

あの大きさの松の板が手に入らなかったので、

 

大阪の材木店に見に行き、

 

ブビンガを手に入れて使用しました。

 

ちょっとしたチャレンジでしたが、

 

遠目で見ると赤松のようで、違和感なく納まっています。

 

 

丸ノコの刃が負けて加工が大変…と大工さんが言っていましたが、

 

他で聞くと、それは慣れで解決できる問題…と。

 

 

沈木の類だから、重く硬いのが当たり前。

 

それを、普通の木材と同じように加工しようとするから無理があるようです。

 

 

縁側の天井は、竿縁と天井板をきれいに割るために、

 

大工さんに、

 

ほんとにこんな張り方をしていいのか?……と言われながら、

 

 

中杢を柾で挟んで張ってもらいました。

 

 

私的にはそれほどイレギュラーなことではないのですが、

 

大工さんには抵抗があったようです。

 

 

既製品で、同じメーカーで、産地も同じ天井板ですが、

 

柾と中杢でもこんなに色が違うんですね。

 

 

過去にもやったことがあるのですが、その時は、こんなに違わなかったので、

 

時期や地域にもよるんですかね?

 

 

でも、これも、時間が解決してくれるでしょう。

 

 

広間の材料は、

 

床柱と琵琶台の天板を除いてほぼ地元の材料で賄いましたが、

 

小間は、そうはいかず、

 

結局多くを京都から取り寄せることになりました。

 

工務店さんが、普段ほとんど取引のない材木屋さんなので融通も利かず、

 

その材木屋さんに目当てのものがなければ、

 

結局、茶室用として規格化して販売している材料に頼るほかなかった部分もたくさんあります。

 

これが決して安くなかったため、この辺も課題です。

 

 

小間の明るさというか(暗さかな?)…にも施主のお好みがあるので気を遣うところです。

 

 

ここはお稽古にも使うというお話もあったので少し明るめに考えましたが、

 

それにしても、まだまだ明るめ。

 

庭の木々が育ってくるともう少し落ち着いた明るさになってくると思います。

 

 

建築は出来たときが始まり。

 

時間の流れで衰退あるのみの新建材と比べて、

 

自然素材でできた建築は、

 

時間の流れととともに、

 

その変化が楽しむことが出来るのが一番の魅力だと思います。

 

 

そんな変化を、今後も楽しんでいただけると幸いです。

 

 


 

 小間外観・露地

 

 小間内観・水屋

 

 玄関

 

 立礼席

 

 袴付

 

 広間8帖・水屋・縁

 

 夕景