一客一亭

 

今度、友人に来ていただいて一客一亭の茶事をする。

 

施主との打合せの後、そんなお話をお聞きした。

 

 

一客一亭…。

 

多く聞く話ではないので、

 

詳しく聞いてみると、  

 

心易い友人と、

 

一緒に学ぶ感じの茶事で、

 

場所は、ご自宅の六畳の和室。

 

 

…ということ。

 

茶事に使うという和室を見せて戴くと、 

 

ごく普通の四畳半切の六畳。

 

 

部屋を見せて戴いたあと、

 

少々頭に浮かぶことがあり、

 

提案をしてみた。

 

 

お二人で六畳はちょっと広すぎませんか?

 

何かで仕切って、

 

空間を小さくしてみてはどうでしょう?

上手くいくかどうかはわかりませんが、

 

小間っぽい雰囲気が出て、

 

ちょっと違った雰囲気の茶事になると思いますよ。

 

 

…で、百聞は一見に如かず。

 

一度やってみて下さい…ということになった。

 

 

二枚折があればそれでもいいのだが、

 

しっかり仕切るだけの幅のものはないので、

 

布で仕切るのはどうでしょう?…と提案。

 

 

数日後、

 

布の垂らし方なども考えた上で、

 

試験用の材料を集めてたずねる。

 

 

ほんとは三畳ぐらいにしたいけど、

 

部屋の構造から、一番無理がなさそうな四畳半に仕切る…。

 

 

調達した「遮光用スクリーン」という布地は、

 

試験的に手に入れた比較的価格の安いものだったため、

 

意外と透けて見えた。

 

 

遮光が効いてるなら、

 

あまりにキツイ色だとと重々しいな…と黒を避けてベージュにしたが、

 

この透け感なら黒でもよかったかも…。

 

まぁ、試験的にやるだけだから…(いいわけ)

 

 

少々、布を張るのに苦心する。

 

手間取りながら、手も貸して戴いて、

 

弛みもあり、しっかり張れていない状態ではあるけど、

 

なんとか一応の仕切りにはなった。

 

 

手造り感満載で、完成度が低く、

 

この程度では、あまり効果はないかもしれないな…と、

 

私自身は思ったので、

 

あまり効果がないかもしれないのでやめましょうか?

 

…と取り外しにかかろうとすると、

 

 

何か、感じるものがあったのか?

 

私の提案に対する単なる配慮なのか?

 

その方のチャレンジャー精神なのか?

 

 

待って、折角だから…と、

 

このまま茶事を進めて戴くことになった。

 

 

しっかりと張り切れていない布を垂らしたまま…。

 

 

最後にちょっと微調整して、弛み感は減りましたけど、

 

手作り感は解消できず…。

 

 

とはいえ、実験していただける貴重な機会。

 

有難いお話。

 

 

当日は私は参加していないので、感想を詳しく聞く。

 

 

茶事は、楽しく、脱線しながらも粛々と進んだ。

 

脱線しながら進んだのであれば、粛々と…とは言わないかもしれないが、

 

そこは、個人の見解として、粛々と(笑)

 

 

準備をして、席入り、炭点前…と流れた後、

 

簡単な食事の時分どき。

食事が空腹を、煮物碗の暖かさが冷えた体を突き抜けて心まで染みわたる。

 

お酒もちょっとばかし戴いて、

 

お持たせのめずらしい主菓子をおいしく戴いてから、中立ち。

 

 

中立では、後のことを考えて、

 

二人で食事の後片付けをすませ、

 

中立の休憩をしていただいている間に濃茶の準備を。

 

 

ここで主役級の珍客もあったりして、楽しさ倍増。

 

お濃茶から続き薄の流れで…完璧な茶事を、やっぱり粛々と…(笑)。

 

 

垂らした布のことなどすっかり忘れて、

 

楽しく、とても思い出深い、有意義な時間が過ごせた…と。

 

 

こんな感じの感想でした。

 

 

ところが、片付けを始めて異変に気付く。

 

たった半間、広さにして一畳半小さくしていただけなのに、

 

布を外して元の広さに拡がった部屋がずいぶんと広い。

 

 

で、思い返してみると、

 

二人だと、四畳半でも広いぐらいに感じた瞬間もあり、

 

なんなら、三畳ぐらいでもよかったかも…。

 

 

四畳半だったとはいえ、あの布が効いていたんだ…と気づいたということ。

 

 

部屋の密度が親密度に変わり、六畳では得られない、

 

いい距離感が感じられた…とのことでした。

 

 

どうやら十二分に効果があったようです。

 

 

 

一般的な六畳の和室で、四畳半切の炉の場合は、

 

三畳に仕切るのは少々難しいかもしれません。

 

床の間の関係もあるしね。

 

 

そこは頭を切り替えて、臨機応変に…。

 

 

利休は掛物のない席も多かったという話もあるので、

 

掛物を諦めて花だけにしたり、

 

炉を諦めて風炉で…などと、

 

条件を限定して考えるなら、

 

そして、部屋の構造がゆるすなら、三畳も可能かな…。

 

  

布を垂らすことで、壁の代わりになるんじゃないか?

 

…ということを、ずっと以前から考えている。

 

 

それをずっと引きずっていて、 

 

ある美術館で、

 

ガラスの間仕切りの前に、

 

時々目隠しとして垂らされていた黒の紗のようなロールスクリーンを見た時に、

 

これだ!と閃いた。

 

 

布地のイメージは、宗匠方の十徳のような感じ。

 

 

もうひとつは、ある美術館の小間の壁。

 

黒ではなく布でもないが、

 

和紙を垂らして壁の代わりにしている。

 

 

薄い…といっても少々厚み感がある和紙を使っていたようにも思うが、

 

和紙一枚でも、十二分に壁を感じる。

 

こっちは透けていない。

 

 

これで確信に変わる。

 

 

黒の布地の場合は、透け感が生きる…し、

 

白っぽい和紙は、光だけがとおることで、閉塞感が減っている。

 

 

部屋の一部を仕切る…という前提での、 

 

折角の布…あるいは和紙…だから、「壁感」はあっても、閉塞感は避けたい。

 

 

「壁感」の条件は、

 

おそらく、布や紙のようにふわっと垂らすのではなく、

 

壁のようにピシッ!と垂らすこと。

 

それだけで「壁感」が随分変わってくる…はず。

 

さすがに、今回は実験的な試みだったので、弛んでましたけどね。

 

 

「閉塞感」は、素材で解消できる…とおもう。

 

 

欲を言えば私もその中で一服戴きたかったが、

 

もう布は外された後。

 

でも、感想が聞けただけでも十分にありがたいお話でした。

 

 

たまにはこんなご提案も…。

 

実験して戴ける方がいてこそですので。

 

 

所謂茶室だけが茶室ではないです。

 

建築も考え方次第で、いろんな見立てが出来るはず。

 

でも、使えない茶室は展示用の茶室以外は、茶室とは言いたくない。

 

 

 

今回の試みは、

 

軽々に提案したように見えるかもしれませんが、

 

私の中では、

 

以前から頭の中で練ってきたことをやっと実現できる機会に遭遇した…という印象です。

 

たとえ実験的な試みでも、突拍子もない事をやろうとしているわけでもありません。

 

 

ちゃんと使えて、

 

ちゃんと茶室らしい雰囲気や小間茶室の効果が感じられる空間を想定していますし、

 

「小間茶室」という空間に見立て、代替えになる物として、ちゃんと考えた上での提案です。

 

 

頭の中には、今回の試みを終えてから、

 

こんな風にしたらもっと良くなるな…というところもちゃんと確認済みです。

 

 

次は試みではなく、

 

実際の空間として実現できればいいのな、そんな依頼が来ないかな…?

 

…と待ち望んでおりますが、

 

なかなか、こういう考え方を受け入れていただける方は難しそうです。

 

 

もしも、こんなことできない?…と言うご提案があればご一報ください。

 

真剣に考えますから…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ありがとうございました。